ローマは一日にして成らず
私は昔から手仕事を苦手としていた。
とても不器用で、細かい作業をやっていると、何とも言えずイライラ落ち着かなくなる性分だった。集中力も異常に欠如していたのだろう。
だから、私は職人さんに対する憧れがとても強い。
結婚してから、少しずつ裁縫をするようになった。学校で習った基本など、とうに忘れている。
最初はイライラとの闘いだった。分からないことだらけ、そして本を見ても上手く飲み込めない。
なので、長財布を仕上げた時の感激はひとしおだった。
先ほどまで、何気なしに和紙を使い鍋しきもどきを作っていた。
おばあちゃんの家に行くと、必ずあったカレンダーや広告紙で作られた例のアレである。
こういう単調な作業は苦手だと思っていたが、これが案外没頭できて、不思議と心が落ち着いてくる。
少し前まで、革細工をやってみたいなどと、敷居の高いことを考えていたが、プチ手仕事に慣れていくことにより、徐々にレベルの高い作業へとつながって行くのだと思うので、いつかチャレンジしたい。
そのことは、何にでも当てはまる。
簡単な作業を、繰り返し繰り返し練習して行くことによって、より高度な作業が可能になって行く。
失敗したり、思うようにいかないのはつきものだ。
最初から上手くやろうと思う必要はない。
最初から上手くやろうと思うから、出来なくてすぐに飽きて投げ出してしまうのだ。
自分の今に見合う能力でやるしかない。
「ローマは一日にして成らず」だ。
年が明けたらトートバッグを作ろうと思っている。
私にとっては今から億劫であり、そしてとても楽しみな手仕事である。